私は1965年8月29日神奈川県川崎市の小田という地区で生まれまして、横浜市で「やんちゃ」に育ち、そのまま社会人となり、色々な経験を経て2004年川崎市に在ります。川崎大師の表参道にて菓子の店舗を始める事となりました。そして菓子販売に携わり、多くの和・洋菓子を見て食べて歩く中で、わらび餅と出合います。特に京都の嵐山で食べたわらび餅に感銘を受け、修行することを即決した私は、店主に頭を下げ懇願し『わらび餅作り』を一から学ばせて戴きました。
修行後は川崎に戻り、2006年川崎大師仲見世通りに、たくさんの御縁とご協力を頂きまして『わらび餅専門店 大谷堂』を無事開業する事が出来ました。京都で教わった事をベースに、原料の選定・製法の改良を重ね、『大谷堂のわらび餅』に仕上げてまいりました。
原料にこだわって製造する中で、『本わらび粉の卸値が何故こんなに高いのか?』という壁に当たります。粉問屋・製粉メーカー・本わらび粉生産者から、話しを聞くと、国内で本わらび粉を作っている生産者が減っている。いずれは手に入らなくなってしまうだろうという話でした。
『それならば、自分達の手で本わらび粉を生産しよう』と、2016年山梨県北杜市に約3,000坪の農地を借り、従業員達と重機を使い、開墾し蕨畑を作りました。しかし、蕨からわらび粉を作る製法を知りませんでした。そこで、数年前まで岐阜県飛騨に昔ながらの製法でわらび粉を作っていた村があったと聞き、教えを乞う為に飛騨へ行き、村の方にわらび粉製造に纏わる沢山の話を聞かせて頂き、御指導を賜りました。
春、畑に蕨が芽吹き、夏に向けどんどん育ち、蕨の成長の邪魔をしないように雑草を刈り、夏から秋は刈ってはまた生えてくる雑草との戦いです、秋になると蕨は枯れていきます、枯れたら畑を焼き、冬は雪解けの春を待ちます、雪が解けたら肌寒い中、根を掘り返し移植、そして春の芽吹きを待ちます。この繰り返しを3年続けると蕨の根は立派に成長してくれます。
そして2019年晩秋、初めての根の収穫を致しました、立派に育ってくれた蕨の根たちをきれいに洗い「粉砕→搾汁→撹拌→沈殿→乾燥」と飛騨の大先輩たちから教わった工程を進めて行きます。こうして初めての自社製『本わらび粉』がとうとう完成。 2020年元旦からこのわらび粉を使用したわらび餅が店頭に並びました。
まだまだ試行錯誤なところもあり、わらび粉の出来高は少ないですが、これから一年一年、量と質を高め、失われつつある先人たちが築き守ってきた素晴らしい日本の食文化を継承し、わらび粉作り〜わらび餅作りにこだわり、皆様に美味しさを提供して行く事を使命と考え頑張っていきます。
大谷堂店主 大谷 茂
素材にこだわったら畑作りから始まりました。
文字通りいちから作ったわらび餅です。